CD-ROMで情報を共有する

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学会の抄録集をCD-ROMで配布することはもはや珍しくない。学会誌そのものを紙媒体からCD-ROMに切り替えたところもある。本稿では、CD-ROMを制作するメリットとデメリットを確認し、デメリットをいかに克服すべきか、また、未来に向けて、学術CD-ROMが果たす役割を展望する。

集積した情報を共有する方法

言うまでもなく、すべての学会はぞれぞれの専門分野における情報の集積拠点である。ゆえに、集積した情報をいかに学会員と共有していくか、その情報処理能力が問われている。
以前なら、紙の学会誌に論文を掲載し、ときどき総索引や抄録集などを出版していれば事足りた。しかし論文執筆者の多数がコンピューターを使って執筆する今日、なぜ、出力だけが紙媒体なのか? 検索もできないし、文章を引用する際も、いちいち書き写さなければならない。かさばるし、号数が重なると保管が面倒だ。しかも散逸しやすい、復刻がたいへん。

こうした紙媒体のデメリットがそのままCD-ROMのメリットだといえば、語弊があるかもしれない。
PDFファイルを突っ込んだだけのCD-ROMでは、論文タイトルさえ、横断的に検索できないし、古い論文をスキャニングしてPDF化したものはコピーもペースト(貼り付け)もできない。しかし、こうしたことはCD-ROMというメディアのせいではない。CD-ROMに集録する論文データの情報処理が不適切だからに他ならない。もっとうまいやり方をすれば、CD-ROMは紙媒体の弱点を補完できる。

ということで、以下、コピー&ペーストのできるまっとうなPDF論文を集録した検索機能付CD-ROMという前提で話を進める。

CD-ROMのメリットとデメリット

まずあらためて、CD-ROMのメリットとデメリットを確認しておこう。

メリット

  1. 論文を大量に集録・閲覧できる。
  2. フルカラーで掲載できる。
  3. 講義の録音データや実験映像など誌面上では再現できないデータを集録・閲覧できる。
  4. 読者が目的にあった論文を探しやすい。
  5. 持ち運び・保管しやすい。
  6. 耐久性がある。

デメリット

  1. 紙媒体の持つ風合いがない。
  2. デジタルデータのない論文の掲載が困難。
  3. スマートフォン、タブレット端末、DVDドライブのないパソコンでは閲覧できない。

1. 紙媒体の持つ風合いがない
インクの匂いが好きとか、紙の手触りがどうとかいう人もいるが、装丁や紙の風合いというものは長い間、編集者やブックデザイナーが試行錯誤した文化的な蓄積なのだから、CD-ROMがかなわないのは当たり前だ。
ただ、盤面デザインやジャケットデザインに力を入れることによって、見栄えのいいCD-ROMに仕上げることは可能だ。

2. デジタルデータのない論文は掲載が困難

デジタルデータとして残っていない論文はデジタル復刻すればよい。
ただし、ここでいうデジタル復刻とは、よくある古い学会誌の論文をスキャニングしてPDF化することではない。これでは誌面を画像化しただけで、テキストデータとして検索できない。
デジタル復刻とは、一文字ずつ入力するか、OCRを使うかして、文章をテキスト化することである。図版はドロー系ソフトで正確にトレースする。写真はできる限り原版を探し、レイアウトし直す。
手間はかかるが、こうしておけば、検索できるようになり、図版も鮮明にリメイクできる。
こうしておけば、将来、印刷物にしたり、電子図書館に納入したりする際も、指定のフォーマットに簡単に変換できるようになる。

3. スマートフォン、タブレット端末、DVDドライブのないパソコンでは閲覧できない

DVDドライブのないノートパソコンが出荷されるのは、音楽CDの落ち込みが関係あるかもしれない。DVDドライブは使う人は使うが、使わない人は全く使わないと言われている。
そもそもパソコン自体の売れ行きが落ちている今日、パソコンメーカーは万民受けしない機能をそぎ落として、価格競争力のある商品を市場に投入しようとするものである。しかし、そんなことは気にする必要はない。DVDドライブを必要とする人がいる限り、DVDドライブ付のパソコンが消滅することはないからだ。

それよりもスマートフォン、タブレット端末など新しいメディア、またウェラブル端末等次世代端末に、DVDドライブがないことに注目すべきだろう。
こうした端末は情報をインターネットを通じて送受信することを前提としている。この種の端末が普及すれば、将来、論文もネット越しに、閲覧したいというニーズが高まるだろう。としたら、論文の集積はCDなどの個別のストレージではなく、インターネット上に構築される専門のアーカイブになるはずだ。

アーカイブ機能の構築は今でも技術的には可能だ。問題はアーカイブに集積すべきデータ(論文)がデジタルデータとしてきちんと整理されていないことだ。学術CD-ROMはそのための重要な一歩となる。

まとめ

CD-ROMは、学会が集積した来た専門情報を学会員や他の研究者たちと共有するのに、有効なメディアである。論文検索が可能で、データが再利用しやすいからである。
一方、将来、インターネット上に構築される専門アーカイブに取って代われるだろう。しかし、その場合でも、今日作る学術CD-ROMはアーカイブに集積すべき論文データの供給源となる。

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